省エネ基準(正式名称「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」)の制定の背景は、 1970年代に起きた2度のオイルショック(石油危機)が直接的な引き金です。当時の日本はエネルギー資源のほとんどを輸入の化石燃料に頼っていたため、大打撃を受けました。
「エネルギーを無駄遣いしない国づくり」が急務となり、1979年に「省エネ法」(正式名称「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」)が制定されました。これに基づき、1980年に初めて住宅に対する断熱の目安となる「旧省エネ基準」が設けられました。
1990年代に入ると、地球温暖化問題が世界的な課題として浮上しました。特に1997年に日本で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)」で京都議定書が採択され、日本も温室効果ガスの削減目標を負うことになりました。
省エネ基準について、 家庭生活からのCO2排出量を大幅に減らすため、1992年の「新省エネ基準」、1999年の「次世代省エネ基準」と、住宅の断熱性能や気密性能の基準が段階的に引き上げられていきました。
2011年の東日本大震災による電力危機を経て、エネルギー自給率の向上が再び強く意識されるようになり、さらに、2015年のパリ協定、そして2020年に日本政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」という目標が制定され、省エネ基準は単に「熱を逃がさない(高断熱)」だけでなく、高性能な設備(省エネ)や太陽光発電(創エネ)を組み合わせたZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が推進されています。
下表のとおり、「2025年の省エネ基準適合義務化」や「2030年の適合義務基準引き上げ予定」は、この脱炭素社会の実現に向けた国を挙げての重要なロードマップです。
表:省エネルギー基準等の推移
| 年数 | 省エネ基準等の内容 |
| 1980年(S55) | 省エネ基準 制定 【旧省エネ基準】(断熱等性能等級2相当) |
| 1992年(H4) | 省エネ基準 改正 【新省エネ基準】(断熱等性能等級3相当) |
| 1999年(H11) | 省エネ基準 改正 【次世代省エネ基準】(断熱等性能等級4相当) |
| 2009年(H21) | 長期優良住宅が制定。(要求性能:断熱等性能等級4) |
| 2013年(H25) | 省エネ基準 改正 【平成25年省エネ基準】(断熱等性能等級4) |
| 2015年(H27) | ZEH基準制定(要求性能:断熱等性能等級5) |
| 2016年(H28) | 省エネ基準 改正 【平成28年省エネ基準】(断熱等性能等級4) |
| 2025年(R7) | 省エネ基準適合義務化(断熱等性能等級4・一次エネルギー消費量等級4) |
| 2030年(R12) | 適合義務基準引き上げ予定(断熱等性能等級5・一次エネルギー消費量等級6) 新築についてZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す |
出典:「学ぼう!ホームズ君」

最初は「エネルギーを節約して危機を乗り越えよう」という目的で始まりましたが、現在では「地球環境を守り、持続可能な社会を作るための必須条件」として、住宅の省エネ化が法律レベルで強く推進されています。また、国のためだけでなく、結果として住む人の「ヒートショックなどの健康被害防止」や「光熱費の大幅な削減」といった実生活のメリットにも直結しています。